コンテッサとバロンチェアのレビュー

4月の頭にコンテッサ(Contessa)チェアを作業用の椅子として購入した(届いたのは4月中旬)。しかし使用3日でアームレストが故障するという不幸に見回れ、修理の間ゴールデンウィークを挟んで3週間ほどバロン(Baron)チェアを使用することになった。このたび修理から帰ってきたコンテッサに座ってみて、この2つの椅子の違いが改めて分かったのでレビューとして纏めておく。

まず、コンテッサの良い点を先に述べるとしたら、言うまでもなくジウジアーロのデザインによるその外観であろう。特に後ろから眺めたときに見える曲線の美しさは筆舌に尽くしがたい。

とはいえ、10万円クラスのワーキングチェアとしては悪い点も目立つ。まず、全体的に安っぽいのが致命的だ。特にアームレストは体重をかける度にプラスティック特有の「ギシギシ」という音がする。水平可動部の遊びも大きく、しっかりした造りだとはとても言えない。同様にヘッドレストの剛性も酷いもので、頭を預けたときにとても嫌な感覚を覚えることとなる。

また、調整機能のユーザビリティにも問題が目立つ。リクライニングと座面の昇降がアームレストに内蔵されたスイッチで可能なのはスマートでとても便利だ。しかし、座面の前後移動は慣れるまではとても難しい上に、仮に慣れたとしても、とても使いやすい動作とは言えないだろう。少なくとも筆者にはLeapチェアのレバーによる調整方法の方が使いやすいと感じられる。さらに、ラッチ式のアームレストは最上段に到達しても何ら手応えが変わらないため、思わず行きすぎてまた下まで下がってしまうことが良くある。また、ヘッドレストの伸縮にはかなりの力を必要とするのだが、支持部がプラスティックの細い棒なので、壊れてしまわないか不安になる。

次に、バロンチェアだが、こちらの良い点もやはりその外観だろう。好みにもよるが、エクストラハイバックのバランスのとれた曲線はコンテッサのそれより美しいかもしれない。

価格帯的にコンテッサの廉価モデルとなるため、全体的な性能もコンテッサより劣る。コンテッサのランバーサポートは上下前後に稼働するが、バロンは上下にしか稼働しない。また形状がコンテッサに比べて四角いため、座り方によってはかえって腰が痛くなることもある。ヘッドレストに関しては、貧弱なコンテッサに比べ、安定感がありとても良い。とはいえ、これもプラスティック製なので、頭を預けると嫌な音がする。また、前後に動かないためリクライニング時以外は余り役に立たないのも残念である。

各種調整は基本的にコンテッサと同様であり、座面の前後移動にはやはりコツがいる。ただし、リクライニング時は普通の椅子と同様、座面の下まで手を伸ばす必要があるのだが、コンテッサに慣れている体にはこの動作が非常に面倒に感じられる。コンテッサのアームレスト内臓スイッチは、試座では余り印象に残らない機能なのだが、慣れてしまうとそこそこ手放せない便利さがあるようだ。

次に座面に関してだが、コンテッサとバロンにはそれぞれメッシュとクッションが用意されている。これは個人的な印象なのだが、バロンのメッシュ座席は余り良くない。座面の前端、膝の裏とフレームが接する部分の角度が浅いため、かなり気になるレベルの圧迫感を感じることとなる。メッシュチェアの代表格であるアーロンチェアの場合、座面前端が大きく下に傾斜しており、フレームと膝裏が直接接しにくいようになっているのだが、少なくともバロンにはそこまでの傾斜がない。3週間座った時点での印象として、バロンチェアを買うのならばクッションタイプを選ぶのが良いように感じられる(ただし試座した限り、バロンのクッションタイプはコンテッサほどしっかりしていないように感じられた)。

コンテッサに関してはメッシュ座面は試座しか体験していないので余りはっきりとしたことは言えないのだが、バロンチェアと同様の問題を抱えているように感じられた。特にリクライニングを最大に傾けると、角度も相まって完全にフレーム部分に体重がのった状態になってしまう印象を受けた。

ただし、見た目を重視するのならばメッシュ座席をお勧めする。クッション座面は厚みがあるため、モッサリとした印象を受けることになるだろう。

なお、フレーム色の選択に関してであるが、情報を元に実際に確認してみたところポリッシュのみ脚部分が金属製だった。剛性を考えるとポリッシュフレームを選択するのが無難かと思われる。好みにもよるが、美しい曲線が1番映えるのもポリッシュだろう。

このクラスの他のワーキングチェアを考えると、総評はとても難しい。値段の割には安っぽいと見ることも可能だが、同じ傾向で他に良い対抗馬がいるわけでもない。最終的な判断は好みによるところが大きいため何とも言えないが、致命的に欠陥があるわけでもなく、かといってずば抜けて性能が良いわけでもない、無難な椅子としては言い選択しかもしれない。