Turkのクラシックフライパンを買う前に(用途とサイズ)

フライパンの写真
Turkのクラシックフライパン、それは鉄とロマンのフライパン。

Turkのクラシックフライパンは、Turkが製造しているフライパンの中でも最も特徴的な存在のひとつです。一般の鉄フライパンがスピニング加工やプレス加工といった大量生産に向くモダンな製法で製造されているのに対して、Turkのクラシックフライパンは、自由鍛造と呼ばれる古くからの製法で製造されています。自由鍛造では、熱した鉄の塊を何度も機械式のハンマーで叩くことで徐々にフライパンの形に成形していきますが、その工程はほぼ手作業で行われます。手作りゆえの荒々しい表面や、繋ぎ目のないハンドルなど、自由鍛造という現代では珍しい製造方法ゆえの特徴的な佇まいは、他の鉄フライパンと見比べても非常に独特です。

筆者はクラシックフライパンの姿に一目惚れしてしまい、思わずサイズ別で3枚揃えてしまいました。

フライパンの写真
自由鍛造による表面の凹凸がかっこいい

さて、そんなTurkのクラシックフライパンですが、初めての鉄フライパンとして買うのであれば、少しだけ注意が必要です。

用途

クラシックフライパンはとにかく焼き料理で輝きます。一方で、炒め調理には全く向きません。というのも、重量がそれなりにあるのと、一般的なフライパンに比べると縁が低いことから、フライパンを振ることが求められる調理をストレスなく行うことが難しいのです。さらに、炒め調理の場合、フライパンを持ち上げて完成した料理を皿に移すことがありますが、クラシックフライパンを持ち上げて空中で保持するには、それなりの筋力が必要です。参考までに、28cmのクラシックフライパンは約1.8kgで縁の高さは3.3cm程度です。これに対して手元にあるT-falの26cmテフロンフライパンは約0.8kgで縁が4.3cmあります。数字だけ見ても炒め料理には向かないことが何となく分かるでしょうか。

フライパン上のホットケーキの写真
ホットケーキもきれいに焼ける

炒め物が苦手な一方で、いわゆる「焼き」調理は非常に得意です。それなりに板厚があることから、鉄フライパンの中では底面の温度が均一になりやすい傾向にあります。ステーや魚を焼く場合はフライパンを動かす必要が無いので、重量も縁の高さも特にストレスにはなりません。焼き料理の場合、低い縁はフライ返しの邪魔にならないのでむしろ利点にすらなります。また、これらステーキや魚であれば、最後はトングやフライ返しを用いて皿への移動を行うことができるため、調理終了後にフライパンを持ち上げる必要もありません。

以上の理由から、テフロンの一般的なフライパンを置き換えるために、汎用的に使える鉄フライパンを探しているのであれば、クラシックフライパンは期待に答えられないかもしれません。もちろんフライパンを振る代わりにヘラを使って混ぜることもできますが、やはり内容物が溢れやすく、ストレスは免れません。おそらくは炒め物用にサブのフライパンが欲しくなるでしょう。筆者の場合も、クラシックフライパンで炒め物をすることは諦めて、別途炒め物用のフライパンを購入しています。もし、1枚のフライパンですべてを解決したいのであれば、例えば極シリーズなどの、より軽量で縁の高いものを選んだほうが無難かもしれません。

高さの異なるフライパンの写真
炒め物用のDeBuyer La Lyonnaise 30cm (5020.30)との比較

なお、取っ手部分は通常の調理であれば触れなくなるほど熱くなることは無いようです。筆者も普段は素手で使用しています。

サイズ選び

お値段がそれなりにするクラシックフライパン、サイズ選びで失敗したくないという気持ちも高まります。一方で、家族構成や用途によって適切な大きさが違ってくるのも事実なので、正解のサイズを選ぶのは簡単ではありません。手元に20cm、24cm、28cmのクラシックフライパンがあるので比較してみました。

異なるサイズのクラシックフライパンの写真
手前から24cm、20cm、28cm

20cm(重量約1.0kg、底面約14cm)

卵2個の目玉焼きがちょうどいいサイズ。ちょっとしたものを調理するには十分。

24cm(重量約1.4kg、底面約17cm)

筆者の家ではあまり出番がない。二人以上だと中途半端なサイズ感。一人暮らしならいいのかも。

28cm(重量約1.8kg、底面約20cm)

メインディッシュ用。場合によってはこれでも小さい。

板厚は実測で全サイズ2.5mm前後のようですが、手作り故に不均一なところもあるようです。

二人家族以上で26cmと28cmで悩んでいる方には、28cmをおすすめします。筆者の場合、2食分以上を調理すると28cmでも小さいと感じることがあります。ただ、30cm以上になると重さもかなりのものになるので、腕力に自身のない方は注意が必要です。

使い始めについて

出荷時に錆止め用の油(ワックス?)が表面に塗布されているため、使用前に処理が必要です。

中性洗剤でよく洗ってから、適量の油とともに火にかけます。販売元は野菜くずを炒めることも勧めていますが、筆者の場合、面倒なのでクッキングペーパーを沈めてトングでグリグリして終わりにしています。これまでのところ特に問題もありません(野菜くずを炒める必要性が気になるところです)。

なお、いわゆる「焼き込み」は不要だと思われます。というのも、クラシックフライパンの場合、表面がすでに酸化皮膜で覆われているようなので(鉄の地肌が見えません)、焼きこんでもあまり意味がありません。公式でも特に焼き込みは指示されていません。

最初から錆びてる?

ところで、クラシックフライパンは個体によって出荷時から錆びているように見えるものがあります。筆者が入手したクラシックフライパンのいくつかも、表面が赤いサビのようなもので覆われている部分がありました。上記のページでも、最初の写真だけ赤い部分が見えます。最初の処理で消えたので、錆止め用の油かワックスが変色したものなのかもしれません。

品質とブレ

クラシックフライパンは自由鍛造によって作られているため、個体差がそれなりにあります。筆者が確認している範囲では、縁の部分がきれいに円を描いていない個体や、ハンドルの角度が若干おかしいものなどを見たことがあります。値段が値段なので、こういった個体に当たってしまうとショックも大きいので、なるべく信頼できる販売店で買うことをおすすめします(ハンドルの角度ぐらいであれば自分で調整もできますが)。

IHをご利用の場合、底部分の確認も重要です。クラシックフライパンは底部分も多少ばらつきがあるので、完全な平面を期待することは出来ません。筆者の場合、グラストップのコンロで使用していますが、回転するほどではないものの、若干のガタツキは感じます。五徳を使用するガスコンロであれば気にならないレベルでしょうか。

実物を見たい場合

筆者が確認した範囲で現物を手にとって確認できるお店を紹介します。品切れや取扱い終了もありえますので、お出かけの際は事前にお店に確認することをおすすめします。

買うべきか、買わざるべきか

クラシックフライパンの一番の利点はとにかくかっこいいことです。10枚以上の鉄フライパンがある我が家でも、Turkのクラシックフライパンはその特徴的な佇まいで存在感を示し続けています。用途は若干限られてしまいますが、一目惚れしてしてしまったのであれば、それはもう買うしか無いのです。難しいことは買ってから考えましょう。