De Buyerの鉄フライパン:Carbone PlusとMineral B Elementの比較とレビュー

de Buyer Carbone Plus with Special Handle
3mmという厚みが一番の特徴のde Buyer Carbone Plus

鉄フライパンのメーカーとして、世界的に有名なブランドの一つが、フランスのde Buyer(デバイヤー)です。1830年創業のde Buyerは、フライパンを始めとして様々な調理用品を販売しており、本国のフランスはもちろんのこと、日本や米国でも老舗ブランドとして広く親しまれています。日本国内では特に鉄フライパンのMineral B Elementシリーズが有名で、鉄フライパンを初めて購入する人にとって、最初に候補に上がるブランドの一つと言えます。最近ではTurkのクラシックフライパンとMineral B Elementで、どちらを買うべきか悩む方も多いようです。

今回紹介する鉄のフライパンは、そんなde BuyerのCarbone Plus(カーボン・プラス)という商品です。

Mineral B ElementとCarbone Plus、どちらを選ぶ?

Carbone Plusの話に移る前に、de Buyerについて語るのであれば、Mineral B Element(ミネラル・ビー・エレメント)に触れない訳にもいきません。

De Buyerは重量級のフライパンとして、Mineral B Element(5610シリーズ)とCarbone Plus(5110シリーズ)というシリーズを併売しています。この2つのシリーズはフライパンの本体の作り自体はほぼ同一なのですが、どうやらCarbone Plusが業務用という位置づけで売られているようです。そのため、全体としてはMineral B Elementの方が若干丁寧に作られていて、その分値段も高く設定されています。日本国内では、Mineral B Elmeentの方を見かける事のほうが多いようですが、Carbone Plusも比較的簡単入手することが出来ます。

両者の違いをそれぞれ見ていきましょう。

まず、フライパン本体部分の作りですが、この部分は両者とも同一です。そのため、調理性能という意味ではこれらのシリーズに大きな違いはありません。新品時の錆止めコーティングについても、Mineral B Element、Carbone Plus共に蜜蝋コーティングになっています。唯一の違いは、Mineral B Elementには本体の中央に蜂の刻印があるのですが、Carbone Plusにはそれがありません。

ハンドル部分についても、どちらも同じ形状でエポキシコーティングとなっています。違いはというと、色味と質感で、比較的テカテカとしたMineral B Elementに対して、Carbone Plusの方が黒っぽい落ち着いた色なので、好みによってはCarbone Plusのほうが良く見えるかもしれません。また、Mineral B Elementはハンドルのエンド部分に黄色い蜂のマークのボタンが付きます。どちらのモデルも握り心地は良好ですが、オーブンでの使用には後述する制限がかかります。

サイズの選択肢はCarbone Plusに軍配が上がります。Mineral B Elementがほぼ4cm刻みなのに対して、Carbone Plusであれば、18cmから32cmまでは2cm刻みでサイズを選ぶことが出来ます。Carbone Plusはさらに大きいサイズも存在するのですが、家庭用としては32cmを超えると取り回しが厳しくなってくるため、一般的にはあまり関係ないでしょう。

販売サイズ

板厚に関しては、Mineral B ElementもCarbone Plusも、24cmまでが2.5mmでそれ以上は3mmになっています。

以上のように、サイズの選択肢や見た目の若干の違いを除くと、両者はほぼ同一のフライパンです。そのため、どちらを選んでも大差はありません。個人的にはCarbone Plusの方がシンプルな見た目で好きなのですが、Mineral B Elementの蜂のマークも可愛いくて捨てがたいところです。

ハンドルと耐熱性

オーブンを使った調理をしない場合にはあまり関係ないのですが、前述の通りMineral B ElementとCarbone Plusのハンドルには、耐熱上の制限があります。これはフライパン本体の問題というよりも、ハンドルのエポキシコーティングが原因で、公式のFAQによると、200℃で10分以上オーブンで使用するとコーティングを痛める可能性があるとされています。

筆者の場合、ステーキを調理する際などに、フライパンごとオーブンに入れることがしばしばあるため、この制限は気になるところです。Amazonでのレビューなどを見ると、それ以上の温度で使っても色が変わるぐらいで特に問題がない、という声もあるのですが、熱でエポキシコーティングが弱くなるとミトンで握った際に張り付くことがあるので、可能であれば避けたいところです。

特別ハンドル版Carbone Plus

de Buyer Carbone Plus with Special Handle
250℃で2時間耐えると書かれたシール

そんな筆者の悩みを解決してくれるのが、特別ハンドル版のCarbone Plusです。カタログ上は5190という型番のこのモデル、オーブンを使用する場合も、250℃で2時間まで対応するという仕様になっています。

この特別モデル、興味深いことに米国ではAmazon.comでも販売さていて簡単に入手できるのですが、フランス本国や日本ではあまり見かけることがありません。一方で、日本やフランスでは普通に販売されている通常のCarbone Plus(5110シリーズ)が米国では見当たらないため、米国だけ何か事情があるのかもしれません(オーブン調理の頻度が高いからでしょうか)。

この記事を書くためにde Buyerのサイトを眺めていて気がついたのですが、最近は5190のページ自体も公式サイトからは削除されてしまったようです。2018年の2月ぐらいまではページがあったはずなので、もしかしたら廃盤にってしまったのかもしれません。最近はステンレスハンドルのCarbone Plus(5130シリーズ)もあるので、オーブン対応はそちらに統合するのかもしれません。

特徴とスペック

de Buyer Carbone Plus with Special Handle
シンプルだけど美しい佇まい

それでは、各部の詳細を見ていきましょう。

フライパン本体部分の形は、Mineral B Elementや通常のCarbone Plusと同一です。de Buyerは底面が若干狭めになっていて、28cmの場合も底面は20cm前後になります。そのため、サイズを選ぶ際は少し大きめのものがいいかもしれません。2人家族以上であれば26cmよりは28cmのほうが使いやすいでしょう。とはいえ、力に自身のない場合は26cm(250gぐらい軽くなります)のほうが負担は小さくなります。このあたりは腕力と相談して決めることになりそうです。

de Buyer Carbone Plus with Special Handle
28cmでもステーキを2枚焼くと結構ギリギリ

28cmの板厚は3mmで、重量は2.1kgあります。Turkのクラシックフライパンが同じ28cmで1.8kg程度なので、Turkに比べてもかなり重く感じます。一方で、ハンドル自体は持ちやすいように作られていて、コーティングの効果もあってか手が痛くなるという事はありません。Dartoのような鉄板そのままのハンドルに比べると、持ち上げる際の負担が小さいのが分かります。

なお、Carbone PlusやMineral B Elementは、MauvilのM'Steelなどと同様に、本体の中央部分が意図的に盛り上がった構造になっています。これは加熱による変形を予め見越したもので、熱による膨らみを上方向に誘導することで、平らな熱源の上でも安定して利用できるようになっています。その分油などが外周に流れやすくなってしまいますが、この処理がなされていないとコンロの上でフライパンがガタつくようになるので致し方ありません。実際に、Dartoの第1世代などは中央が下方向に膨らんでしまい、平らな面の上でコマのように回転してしまうことがあります。

de Buyer Carbone Plus with Special Handle
黒いハンドルが格好いい

特別ハンドル版の唯一の特徴は黒いハンドルにあります。耐熱版とはいえ、鉄のハンドルがむき出しということはなく、ザラザラとした黒いコーティングがされています。このコーティングが通常のエポキシコーティングよりも耐熱性に優れているらしく、実際にオーブンで使用してみても特に問題なく使えています。見た目的にも黒いハンドルは全体が引き締まって見えて良いですね。

得意な用途

2.1kgという重さを考えれば言うまでもないことですが、用途は焼き料理に特化しています。フライパンを煽るのは無理があるので、汎用的に使えるフライパンが欲しい場合は選択肢として適しません。肉でも魚でも、焼くだけならばとても得意です。参考までに、手元にあるT-falの26cmのテフロンフライパンは約0.8kgです。de Buyerは2.5倍以上の重さということになります。

深さは約4.5cmあり、ヘラでフライパンの中をかき混ぜても中身が溢れやすいということはありません。そのため、木べらでかき混ぜながらであれば、炒めものも出来なくは無いのですが、あまりお勧めは出来ません。魚やパンケーキのようなものを焼く場合は、しなるフライパン返しがあると、作業が楽になります。

Turk v.s. de Buyer

鉄フライパンを選ぶ際に候補に上がりやすいTurkのクラシックフライパンとde Buyerですが、どちらを買うのがお勧めでしょうか。

もし、現実的な使い勝手だけを考えるのであれば、筆者はde Buyerをお勧めします。持ちやすいハンドルやTurkよりも厚い板厚などは、de BuyerがTurkに勝る点と言えます。フラットなコンロの上での安定感や、Turkよりも高めの縁も、普段使う上で有利に働きます。また、日本においては実売価格の点でもde Buyerに分があります。

一方で、Turkの利点は重量と構造です。もし、de Buyerの重量がネックになる場合は、Turkも選択肢になりえます。28cm同士で比べてみた場合、Turkの方が一割以上軽いため、力に自身が無い場合には有利です。また、Turkはハンドルと本体が一体成型のため、洗浄しやすいという利点もあります。もっとも、de Buyerの接合部分の汚れが気になるということも、普段使っている上ではあまりないことなので、ここは大きな利点にはならないかもしれません。

筆者の印象を言えば、実用のde Buyer、ロマンのTurkでしょうか。焼料理に関して言えば、どちらを買っても後悔することは無いでしょう。

Turkについては別記事もあります。

使い始めについて

Mineral B ElementとCarbone Plusは蜜蝋でコーティングされているため、最初にそれを洗い流す必要があります。方法としては、熱湯をかけてこすり洗いするだけなので、そこまで難しいことはありません。大きなオーブンがある場合は、100℃前後にセットしてフライパンごと焼いてしまうと簡単に剥がすことが出来ます。この場合、蜜蝋が垂れるのでベーキングパンなどの上にフライパンを置く必要があります。

注意点としては、本体とハンドルの接合部分の蜜蝋を念入りに落とすことです。これを怠ると、調理中などに溶けた蜜蝋が流れ出てくる上に、火で焦げてフライパンにこびりつくことがあります。蜜蝋が焦げる際に変な匂いがして驚くことになるので注意が必要です。

いわゆる空焚きによる「焼き込み」は必要とされていません。de Buyerの公式手順でも特に推奨されていません。なお、筆者は焼き込み後に亜麻仁油とオーブンを使ったシーズニングを7週ほど行いましたが、鋳鉄スキレットに比べると表面がなめらかなために、シーズニングがどうしても剥がれやすいようです。最終的にはステーキソースを作る際に赤ワインを熱したら全て剥がれて銀色の表面に戻ってしまいました。面倒になったのでそのまま使っていますが、焦げ付きやすいというわけもなく問題なく使えています。酸性の食材を扱う可能性のあるフライパンで、必要以上にシーズニングに凝るのは無駄と言えます。

de Buyer Carbone Plus with Special Handle
左は手前がシーズニング後のフライパン。焼き込みによるテンパーカラーが美しい。右は赤ワイン使用後。すべて剥がれてしまった。

実物を見たいときは

実物を見てから購入したい場合、東京都内であれば合羽橋の「キッチンワールドTDI」か「Dr.Goods」などで現物を確認することができます(在庫状況などを確認の上おでかけください)。

まとめ

De BuyerのCarbone Plusは非常に頼れる相棒です。ステーキや魚のソテーなど、焼き物であれば何でも安心して任せられます。作りも非常にしっかりしているので、取り回しも安心して行うことが出来ます。板厚を考えれば割安とも言えるお値段ですし、1枚あると色々な料理で活躍してくれます。